執筆者:井潟百之威(株式会社スキルディッシュ 代表取締役)
特定技能外国人の雇用を検討されるにあたり、「そもそも特定技能って?」「技能実習とは何が違うの?」といった疑問をお持ちではありませんか?
本記事ではそれらの疑問をまるっと解決できるよう、詳しく解説していきます。
1.「特定技能」とは?
「特定技能」とは、日本の人手不足問題の解決を目的に、2019年4月に創設された制度(在留資格)です。
今までは、外国人をフルタイムで雇用する場合、基本的に現場で働くことはできませんでした。
しかし、特定技能の創設により、人手不足とされている16分野を対象に一定の専門性・技能を有する外国人はフルタイムで現場作業に従事することができるようになりました。
特定技能外国人は日本人と同様に、単純労働を含む幅広い業務に従事することができるため、受入れ企業(雇用主)の人手不足問題の解決につながっています。
政府も積極的に特定技能外国人の受入れを進めており、今後も増加していくことが予想されています。
1-1.特定技能の対象分野・業界
在留資格「特定技能」を取得することのできる分野は以下の16分野です。
スキルディッシュでは特定技能16分野のうち、「飲食料品製造業」と「外食業」に特化して人材のご紹介が可能です。「飲食料品製造業」と「外食業」分野で特定技能外国人の採用を検討中の企業様は、ぜひ弊社へお問い合わせください。
1-2.特定技能の受入れ見込み人数
2019年に始まった新しい在留資格「特定技能」ですが、今後も増加することが予想されています。
政府は、2024年年度~2028年度末までの5年間で82万人の受入れを計画しています。
2024年6月時点で約21万人がすでに受入れられているため、5年間で約4倍に増える見込みです。
参考:法務省|特定技能制度|制度説明資料「外国人材の受入及び共生社会実現に向けた取組」
1-3.特定技能の種類
特定技能には2つの段階があります。
まず「特定技能1号」が与えられ、その後「特定技能2号」が与えられます。
それぞれの違いや取得条件について、下記の表にまとめましたのでご覧ください。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留可能な期間 | 通算上限5年間まで | 無期限 |
対象分野 | 全16分野 | 11分野 |
技能レベル | 特定技能1号評価試験合格 または 技能実習を良好に修了 | 特定技能2号評価試験合格 かつ 監督者として一定の実務経験あり |
日本語レベル | 生活・業務に必要な日本語力を試験で確認 (日本語能力試験N4以上に合格) | 試験での確認なし |
家族帯同 | 不可 | 可(配偶者、子供) |
支援の有無 | 受入れ企業または登録支援機関による支援が必要 | 支援は不要 |
2.特定技能と技能実習の違いとは?
特定技能と技能実習はよく混同されますが、目的や内容が全く異なる在留資格です。
「特定技能」は、日本の人手不足問題を解決するために外国人労働者を受け入れる制度です。
対して「技能実習」は、発展途上国の人材が日本の先進技術を学び、母国の発展に役立てることを目的とした国際貢献の制度です。
※「特定技能実習」という制度は存在しないので注意しましょう。
特定技能と技能実習の違い一覧は下記の表をご覧ください。
制度名 | 特定技能 | 技能実習 |
制度の目的 | 対象分野の人手不足問題の解決を目的に労働者として外国人を受入れる | 国際貢献を目的に、実習生として外国人を受入れる |
対象分野 | 16分野 ※正社員として幅広い業務に従事可能 | 85職種156作業 ※実習目的のため、従事できる業務は限定的 |
在留可能な期間 | 特定技能1号:通算5年間 特定技能2号:上限なし | 最長5年間 技能実習1号:1年以内 技能実習2号:2年以内 |
人材レベル | ・即戦力となりうる ・技能水準:相当程度の知識または経験あり ・日本語水準:N4以上(日常会話が可能なレベル)の日本語能力あり | ・未経験 ・技能水準:試験等の必要なし ・日本語水準:試験等の必要なし |
採用方法 | 受入れ企業が直接海外で採用活動を行うこともできる | 監理団体と送り出し機関を通して行う |
受入れまでにかかる時 | 通常6か月以内 | 通常6か月以上 |
受入れ人数の制限 | なし(飲食料品製造業/外食業) | 常勤職員の総数に応じた人数枠あり |
転職の可否 | 可 | 原則不可 |
コスト | 5年間で技能実習より30万円程 割安になる場合が多い | 5年間で特定技能より30万円程 割高になる場合が多い |
特定技能の最大の特徴は、人手不足を補うために設けられた制度であるという点でしょう。
単純労働を含む幅広い業務に従事できるため、人手不足問題の解決に直接つながります。
企業にとって特定技能外国人を雇用するメリットは多々ありますが、主として下記が挙げられます。
特定技能外国人を雇用するメリット
・入社時から日常会話レベル以上の日本語力がある
・入社時からある程度の技能・知識を持った労働力が確保できる
・寮の手配が必須ではない
・受け入れ人数の制限がない(飲食料品製造業・外食業)
・特定技能2号に移行できれば、無期限で雇用可能
3.特定技能外国人を採用する3つの方法
特定技能外国人を採用するには、海外在住者からの採用、国内在留者からの採用、技能実習からの採用の採用の3つの方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、貴社にとって最適な方法を検討しましょう。
3-1.海外在住者からの採用
近年、主流になってきているのがこちらの採用方法で、海外に住む外国人を特定技能で採用します。
ベトナムやインドネシアなどでは現地で試験が行われており、試験に合格した人を採用できます。
海外在住者を採用するメリット
日本在住経験のない外国人の場合、就業場所等の希望条件が特にない場合が多いです。
勤務場所が理由で採用に苦戦している企業にも採用のチャンスが多くあります。
海外在住者を採用するデメリット
海外から在留資格を申請するため、在留資格取得までの審査に時間がかかる場合があります。
入社までに数か月程度を見込む必要があります。
3-2.国内在住者からの採用
国内にいる留学生や他の在留資格を持つ外国人も、試験に合格すれば特定技能に移行できます。
特に留学生は、日本に数年間住んでいるため日本語が堪能な場合が多いです。
国内在住者を採用するメリット(留学生など)
日本に在住する留学生は、日本語学校や専門学校、大学で2年以上の在住経験があります。
そのため、日本語レベルが高いのがメリットです。
国内在住者を採用するデメリット(留学生など)
日本での生活に慣れているため、働く場所や給与など希望する条件が高い傾向があります。
3-3.技能実習からの採用
技能実習の2号または3号を修了した外国人は、特定技能に移行することができます。
ただし、技能実習で行っていた業務と同じ業務を特定技能でも行う場合に限り、試験が免除されます。
異なる業種に移行する場合は、その業種ごとの技能評価試験に合格する必要がありますので注意しましょう。
技能実習修了者を採用するメリット
技能実習の同業種からの採用であれば、2年以上その業務に従事した経験のある即戦力人材を採用できるメリットがあります。
技能実習修了者を採用するデメリット
技能実習修了者を採用する場合、技能実習時代は身の回りのほとんどの世話を管理団体の職員に
頼っていた方が多いため、人に頼ることが当たり前になっている方が多い傾向にあります。
採用条件や雇用背景により、最適な採用方法が変わってきます。
スキルディッシュでは求人条件をしっかりとヒアリングさせていただいた上で、貴社に適切な採用方法のご提案が可能です。
4.特定技能の要件・必要な資格(企業側、外国人側)
特定技能外国人を受入れるには、企業と外国人の双方が要件と必要資格を満たす必要があります。
それぞれの要件について解説していきます。
4-1.企業側の要件・必要な資格
特定技能外国人の受入れを検討している企業は、下記要件を全て満たしているかを確認しましょう。
1.基準要件
2.雇用契約の要件
3.雇用後の義務の履行
4.協議会への加入
1.基準要件
◆労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
→前提条件ですが、雇用後も定期的に出入国在留管理局からのチェックが入るため遵守しましょう。
◆1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
→日本人も対象となりますので注意しましょう。
◆1年以内に行方不明者を発生させていないこと
→受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないか確認しましょう。(技能実習も含みます)
◆欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
→過去5年間に遡って確認しましょう。
◆支援に要する費用を、直接または間接に外国人に負担させないこと
→支援にかかる費用を外国人本人に負担させることはできません。
◆外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ企業が認識して雇用契約を締結していないこと
→例えば、外国人本人の早期退職や失踪を防ぐために、あらかじめパスポートや金品を預かる行為はできません。
◆違約金の徴収等を定める契約等を締結していないこと
→外国人本人の早期退職や失踪を防ぐために、違約金等を定める行為はできません。
◆報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
→銀行口座への振込が原則となります。
2.雇用契約の要件
◆分野ごとの省令で定める技能を要する業務に従事させるものであること
→特定技能の対象業種かつ該当の業務に従事させる雇用契約である必要があります。
◆直接雇用かつ、正社員での雇用であること
→飲食料品製造業/外食業分野での派遣社員での雇用はできません。
◆所定労働時間が、同じ受入れ企業に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること
→同ポジションで雇用をしている日本人従業員と同じ条件である必要があります。
◆報酬額が日本人が従事する場合の額と同等以上であること
→同ポジションで雇用をしている日本人従業員と同じ条件である必要があります。
◆外国人であることを理由として、待遇等に差別的な取扱いをしていないこと
→労働時間や給与だけではなく、その他の福利厚生なども日本人と同等である必要があります。
◆一時帰国を希望した場合、休暇を取得させるものとしていること
→日本人雇用時と、同等の待遇が必要です。一時帰国の際の休暇取得できる日数や、繁忙期等で一時帰国が難しい期間がある場合、入社前に本人の理解できる言語で書面等で交わしておきましょう。
◆受入れ企業が外国人の健康や、その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることができること
→日本人同様に、健康診断を受信させることも必要です。
◆契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしていること
→契約終了に伴い外国人が帰国する際は、帰国旅費は本人が自己負担できるよう措置を講じましょう。
3.雇用後の義務の履行
◆外国人と結んだ雇用契約を履行すること
→雇用契約通りに雇用をしているかどうかは入国管理局のチェックが必ず入ります。
確実に履行できる雇用契約にしましょう。
◆外国人への支援を適切に実施すること
→特定技能外国人の雇用後は義務的支援を行う必要があります。
◆出入国在留管理庁への各種届出を行うこと
→特定技能外国人の雇用後は各種の報告業務を行う必要があります。
4.協議会への加入
特定技能外国人を雇用する場合、協議会に加入する必要があります。
協議会は16分野ある特定技能の各管轄省庁を中心に、特定技能外国人の適切な受入れや保護等を目的に組織されています。
飲食料品製造業と外食業は農林水産省管轄の、食品産業特定技能協議会への加入が必要となります。
なお、加入費用・年会費等は無料です。
参考:農林水産省「食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について」
4-2.外国人側の要件・必要な資格
外国人側に必要な要件は下記のとおりです。
前述のとおり、外国人が「特定技能」の在留資格で働く方法は3つあります。
下記のいずれかを満たしている必要がありますので確認しましょう。
◆海外在住者が試験に合格していること
→技能評価試験(各業種ごとの試験)、日本語評価試験(全業種共通)の2つの試験に合格する必要があります。
◆国内在留者が試験に合格していること
→技能評価試験(各業種ごとの試験)、日本語評価試験(全業種共通)の2つの試験に合格する必要があります。
例)留学生が上記試験に合格
◆技能実習2号以上を修了していること
→技能実習2号もしくは3号を修了後、特定技能への移行ができるようになります。
特定技能へ移行する業務が技能実習で従事していた業務と関連性がある場合、試験は免除となります。
5. 特定技能外国人を雇用する際に必要な支援業務
在留資格「特定技能」で外国人を受入れる企業は、特定技能外国人ごとに支援計画書を作成し、その計画に基づいて必要な支援を行う義務があります。
そして、支援の進捗状況を四半期ごとに出入国在留管理庁に報告しなければなりません。
これらの支援は、自社で実施する方法と、登録支援機関に委託する方法があります。
社内の状況を考慮して、どちらかの方法を選びましょう。
5-1.支援計画書の作成・履行
特定技能外国人を採用することが決まった際には、まず「支援計画の作成」が必要です。
この支援計画は、特定技能外国人が仕事中や日常生活を円滑に行うために作成するものです。
支援計画書の作成にあたっては、特定技能外国人が十分に内容を理解できる言語で作成し、本人に説明した上で署名を得る必要があります。
基本的に受入れ企業自身が主導で作成する必要がありますが、登録支援機関に支援業務を委託している場合であれば、登録支援機関から助言や補助等のサポートをを受けながら進めることも可能です。
作成から特定技能外国人への説明に至るまで、スムーズに進めることができるでしょう。
5-2.特定技能で必要な義務的支援
特定技能1号外国人を雇用する企業は、支援計画に基づいて、以下の10の支援を行う義務があります。
出典:法務省|特定技能制度|制度説明資料「外国人材の受入及び共生社会実現に向けた取組」
登録支援機関に支援業務を委託している場合であれば、上記業務は登録支援機関に行ってもらうことが可能です。
5-3.定期・随時報告
定期報告と随時報告も支援業務に含まれます。
定期報告は、外国人の支援状況などを記載した書類を四半期ごとに提出する必要があります。報告期間と提出期限は以下の通りです。
定期報告の対象期間 | 定期報告の提出期限 | |
第1四半期 | 1月1日~3月31日 | 4月15日まで |
第2四半期 | 4月1日~6月30日 | 7月15日まで |
第3四半期 | 7月1日~9月30日 | 10月15日まで |
第4四半期 | 10月1日~12月31日 | 翌年の1月15日まで |
登録支援機関は24年6月時点で約10,000社存在します。
登録支援機関への委託を検討しているが、どの登録支援機関が良いか分からない。
そんなお悩みはありませんか?
そんな時も、スキルディッシュまでお問い合わせください。
食品業界の実績豊富で安心して委託いただける登録支援機関も併せてご案内させていただきます。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は特定技能の制度概要から雇用方法までの全体像をご説明しました。
特定技能の最大の特徴は、外国人がフルタイムで現場作業に従事できるようになったことであり、雇用する企業は右肩上がりに増えています。
中でも、飲食料品製造業・外食業での特定技能外国人の採用ニーズは高く、コロナ後の1年間で1.5倍以上に増加しました。
人手不足に課題を抱える企業様は、特定技能外国人の雇用を検討してみましょう。
スキルディッシュは、「日本の食品業界で働きたい特定技能外国人」を専門にご紹介することが可能です。
さらに、採用後のビザ申請手続きや、就業後の支援業務を行う登録支援機関のご案内まで、フルサポート体制を整えておりますので安心してご利用いただけます。
最適な人材を見つけることが難しい外国人採用だからこそ、専門会社にお任せください。
食品業界(飲食料品製造業・外食業)で特定技能外国人の採用を検討中の企業様は、ぜひお問い合わせください。
この記事を書いた人