執筆者:井潟百之威(株式会社スキルディッシュ 代表取締役)
本記事では、「外食業で特定技能外国人を採用するには?」をテーマに解説していきます。
従事できる業務から、採用手順まで詳しくまとめていますのでご覧ください。
なお、特定技能の詳細、特定技能と技能実習の違いについてはこちらの記事で解説していますのでご覧ください。
1.特定技能「外食業」とは?
特定技能は人手不足とされている16分野を対象にした制度であり、「外食業」もその中の1つに該当します。
特定技能「外食業」を取得している外国人は、レストランや居酒屋などの飲食店で発生する業務過程全般について従事することが可能です。
調理、接客、店舗管理など、現場作業を含む基本的にどんな業務でも行えること、正社員雇用のため日本人と同等の残業を行えることが特定技能「外食業」で外国人を雇用する最大のメリットでしょう。
これまで、外食業で働く外国人の多くは「技術・人文・国際」という在留資格や、「留学生アルバイト」として働いていました。
しかし、「技術・人文・国際」は現場作業に従事させることができないこと、「留学生アルバイト」は就業可能時間が限られることが雇用企業にとっての課題でした。これらの課題を解決する在留資格として特定技能「外食業」は注目されており、取得する外国人も急増しています。
特定技能「外食業」は今後最も伸び率が大きいとされている分野のひとつです。2023年12月時点で13,312人の特定技能外国人が就業しており、政府方針では2024年4月から5年間で最大53,000人の受入れを見込んでいることが発表されています。
参考:法務省|特定技能制度|制度説明資料「外国人材の受入及び共生社会実現に向けた取組」
新型コロナウイルスの収束、インバウンド観光客の増加により、外食需要に回復の兆しが見えてきました。
パート時間制限の問題や、扶養上限額の社会課題も相まって、外食分野での特定技能外国人の活躍は今後さらに拡大していくでしょう。
2.特定技能「外食業」で受入れできる職種・業務区分
特定技能「外食業」を取得している外国人は、調理、接客、店舗管理、デリバリー業務など、外食業を営む飲食店の業務全般を行うことができます。
ホテル内のレストランも、特定技能「外食業」で働くことが可能です。
※ただし、ホテル内のベッドメイキングや受付業には従事することはできません。こちらは特定技能「宿泊業」で従事することが可能です。
外食業を営む飲食店の業務全般を行うことができる特定技能「外食業」ですが、下記の業態では働くことができないので注意しましょう。
・接客や調理等の業務がないデリバリーのみへの従事
・風俗営業許可が必要な店舗での業務
自社の業務で特定技能外国人を雇用できるか分からない場合、まずは各管轄省庁に問い合わせてみるとよいでしょう。下記の問い合わせ先一覧よりご確認いただけます。
特定技能1号の就業可能期間は最長5年間ですが、特定技能2号に移行することができれば、無期限に就業することも可能になります。
2019年に施行された制度のため、外食業分野で特定技能2号を取得している外国人はまだまだ少ないですが、今後増加してくることが予想されています。
3.受入をするための企業の要件
特定技能「飲食料品製造業」の外国人を企業が受入れるためは、満たすべき要件があります。
以下の4つの条件を全て満たせることを確認しましょう。
◆農林水産省、関係業界団体、登録支援機関、その他関係者で構成される「食品産業特定技能協議会」の構成員となること。
◆「食品産業特定技能協議会」に対して、必要な協力を行うこと。
◆農林水産省またはその委託を受けた者が行う調査に対して、必要な協力を行うこと。
◆登録支援機関に「1号特定技能外国人支援計画の実施」を委託するにあたっては、委託する登録支援機関が上記3つの条件を全て満たす「食品産業特定技能協議会」の構成員となっており、さらに農林水産省および「食品産業特定技能協議会」に対して必要な協力を行えること。
参考:農林水産省|食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について
3-1.食品産業特定技能協議会とは?
特定技能外国人を雇用する場合、協議会に加入する必要があります。
協議会は16分野ある特定技能の各管轄省庁を中心に、下記事項を目的に組織されています。
◆構成員の連携強化
→構成員同士の連携を緊密にし、協力体制を強化すること
◆制度や情報の周知・法令遵守の啓発
→特定技能制度や関連情報の周知を図り、法令遵守の重要性を啓発すること
◆地域ごとの人手不足状況の把握と対応
→地域ごとの人手不足の状況を把握し、必要な対応を行うこと
外食業と飲食料品製造業は農林水産省管轄の、食品産業特定技能協議会への加入が必要となります。
なお、加入費用・年会費等は無料です。
参考:食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について
4.受入をするための外国人の要件
外国人が特定技能「外食業」を取得するためには、「日本語を測る試験」と「外食業特定技能1号技能測定試験」それぞれの要件を満たす必要があります。
特定技能外国人を雇用する際は、要件を満たしていることを確認しましょう。
4-1.日本語を測る試験への合格
下記のいずれかの試験に合格する必要があります。
日本語能力試験(JLPT):N4以上
テストは、難しい「N1」~易しい「N5」までの5段階に分かれており、特定技能「飲食料品製造業」を取得するためには「N4]以上の合格が必須です。
「基本的な日本語を理解できる」ことが「N4」試験合格の目安となります。
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT):合格
日本の生活場面でのコミュニケーションに 必要な日本語能力を測定し、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定するテストです。
試験HP▶︎国際交流基金日本語基礎テスト
試験HP▶︎日本語能力試験
4-2.「外食業特定技能1号技能測定試験」への合格
外食業で業務を行うにあたり、必要な能力を持っているかを確認する試験です。
学科試験と実技試験の2つに分かれており、飲食店での衛生管理や接客、事例ごとの状況判断問題が出題されます。
日本語能力、外食業に関する知識がある程度身についた状態での就業となることが、特定技能外国人を採用するメリットの1つと言えるでしょう。
5.受入をする方法
特定技能外国人を採用するには、海外在住者からの採用、国内在留者からの採用の2つの方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、貴社にとって最適な方法を検討しましょう。
5-1.海外在住者からの採用
近年、主流になってきているのがこちらの採用方法で、海外に住む外国人を特定技能で採用します。
ベトナムやインドネシアなどでは現地で試験が行われており、試験に合格した人を採用できます。
海外在住者を採用するメリット
日本在住経験のない外国人の場合、就業場所等の希望条件が特にない場合が多いです。
勤務場所が理由で採用に苦戦している企業にも採用のチャンスが多くあります。
海外在住者を採用するデメリット
海外から在留資格を申請するため、在留資格取得までの審査に時間がかかる場合があります。
入社までに数か月程度を見込む必要があります。
5-2.国内在住者(留学生アルバイト)からの採用
国内にいる留学生や他の在留資格を持つ外国人も、試験に合格すれば特定技能に移行できます。
特に留学生は、日本に数年間住んでいるため日本語が堪能な場合が多いです。
国内在住者を採用するメリット(留学生など)
日本に在住する留学生は、日本語学校や専門学校、大学で2年以上の在住経験があります。
そのため、日本語レベルが高いのがメリットです。
国内在住者を採用するデメリット(留学生など)
日本での生活に慣れているため、働く場所や給与など希望する条件が高い傾向があります。
採用条件や雇用背景により、最適な採用方法が変わってきます。
スキルディッシュでは求人条件をしっかりとヒアリングさせていただいた上で、貴社に適切な採用方法のご提案が可能です。
6.採用までの流れ
最後に、特定技能「外食業」を取得した外国人を企業に雇い入れる流れについて解説します。
6-1.海外からの採用の場合の流れ
海外から特定技能「飲食料品製造業」で外国人を採用する場合、採用しようとしている外国人が「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)」と「日本語能力試験(JLPT)N4以上」のどちらかに合格していること、「飲食料品製造業技能測定試験」に合格していることを確認しましょう。
その上で、次の手順に沿って「特定技能1号」を取得した外国人を雇い入れましょう。
なお、最初の「在留資格認定証明書」の申請の際には、受入れ企業側の情報や採用する外国人に関する情報などを記載した各種資料も必要になります。
外国人本人および登録支援機関とも連携して、書類を揃えていきましょう。
6-2.国内在住者(留学生アルバイト)から採用の場合の流れ
留学生が、留学先である学校を卒業することが前提となります。
その上で、採用しようとしている外国人が「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)」と「日本語能力試験(JLPT)N4以上」のどちらかに合格していること、「外食業特定技能1号技能測定試験」に合格していることを確認しましょう。
なお、審査にあたっては在留継続の適当性の有無を確認されます。
具体的には、「既に日本に在留している外国人が、引き続き日本に在留する人物として、法務大臣が適当と認めるに足りる「相当の理由」があること。」とされています。
7.まとめ
今回は、外食業で特定技能外国人を採用する際の、採用方法および従事できる業務内容について解説しました。
特定技能「外食業」は、今後最も伸び率が大きくなるとされている分野のひとつです。複数の採用方法がありますので、自社に適切な雇用方法を選択していきましょう。
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